プロジェクト

次世代FPSO用新造船体「MODEC NOAH™」及び「M350™」を開発

三井海洋開発株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:香西勇治)は、FPSO(Floating Production, Storage & Offloading system:浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備)業界におけるリーディングカンパニーとして培った設計・建造技術及び豊富なオペレーション&メンテナンス提供実績を活用した次世代FPSO用新造船体「MODEC NOAH」及び「M350」を開発しました。

海洋開発プロジェクトの大規模化、大水深海域への移行に伴い、FPSOの大型化・複雑化並びに操業期間の長期化が進んでいます。当社は、難易度の高い海洋開発プロジェクトにも対応できる世界有数の企業として、これまで最も大型で複雑な数々のFPSOの設計・建造実績を有し、延べ220年を超えるオペレーション&メンテナンス提供実績を強みとしています。昨今の大型FPSOは、中古VLCC(Very Large Crude Carrier:大型石油タンカー)の改造による設計・建造が主流となってきましたが、要求される原油・ガス生産能力の増大によりトップサイド(原油・ガス生産設備)が大型化することに伴う甲板面積の不足や貯油タンクの容量不足が課題となっている他、耐用年数・契約期間の長期化傾向もあり、今後は新造船体の需要・要求が増加することが見込まれています。

これらの市場環境の変化を踏まえ、当社は三井E&S造船株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:古賀哲郎、以下「三井E&S造船」)と共同で、次世代FPSO用新造船体「MODEC NOAH」を開発しました。

「MODEC NOAH」は、2,000隻を超える船舶の設計・建造実績を誇る三井E&S造船が既に開発済みであった次世代FPSO用船体「noah-FPSO Hull」(noah : new offshore adapted hull)をベースにし、各FPSOのオペレーション開始から終了までの20年超の長期間に亘り当社が顧客を含むステークホルダーに提供するライフサイクルバリューの最大化という最重要目標を具現化することを目的に開発された当社独自の次世代FPSO用新造船体です。さらに、圧倒的なFPSOの設計・建造実績を活かし、中古タンカー改造FPSOの設計では技術的には限界となっていたような課題の解消も追求した「MODEC NOAH」の主な特長は以下の通りです。

  1. 1世界中の幅広い造船所での建造が可能
  2. 2広い甲板面積を有し、トップサイドの複雑化・大型化トレンドに対応
  3. 3船体モジュール構造の組合せにより多種多様なFPSO設計・建造プロジェクトへの適用が可能
  4. 4標準設計の船首尾モジュールとプロジェクトによって可変可能な平行中央モジュールの分業建造により建造工程、船台計画の柔軟性が大幅に向上
  5. 5造り易さと耐波浪性を両立させた、平面と2次元曲げから構成される独自の船体形状
  6. 6ユニークな船体姿勢の採用により、機器室を拡大し、配管の機能性及び居住区の安全性も追求
  7. 7安定的にオペレーションを継続しながら貯油タンクを常に点検することが可能な船形を採用し、点検用の通路を整備することにより、メンテナンス活動を事後保全から予防保全主流に転換することが可能
  8. 8乗組員の作業動線を分析し、作業効率向上を目指した全体配置を採用することで、長期オペレーションに必要なメンテナンス活動時間を十分に確保することが可能
  9. 9乗組員の働く環境・生活環境も考慮し、今までにない快適な居住空間を提供

当社は、「MODEC NOAH」のAiP(Approval in Principle:設計基本承認)を、2019年3月に米国船級協会(ABS)より、2019年5月にフランス船級協会(BV)及びノルウェー・ドイツ船級協会(DNV-GL)より、それぞれ取得しました。

MODEC NOAH

また、海底油田やガス田は、その地域によって、石油・天然ガスの性状、水深から波、風、潮流などの海象条件が全て異なり、FPSOにはそれぞれの条件に合わせた仕様が必要とされる他、顧客である石油会社の定める仕様要求も多種多様となります。このことから、当社では、もう一つの次世代FPSO用新造船体である「M350」も並行して開発し、米国船級協会(ABS)及びノルウェー・ドイツ船級協会(DNV-GL)よりAiPを取得しています。この「M350」は、中国船舶重工集団公司(CSIC)傘下で最新鋭の造船設備及び技術を有する大連船舶重工集団有限公司(DSIC)との共同開発です。

M350

当社は、従来の中古タンカーの改造に加え、次世代FPSO用新造船体「MODEC NOAH」及び「M350」という豊富なソリューションをもって、昨今のFPSOに対する旺盛な需要により柔軟に対応すると共に、FPSO業界における確固たる地位を築いてまいります。