浮体式洋上風力発電
脱炭素社会の実現に向けて
当社は、今後の成長が期待される浮体式洋上風力発電市場への参入に向けた事業開発を進めています。
風力発電は、風車の羽が強い風を受けるほど発電量が見込まれますが、洋上風力発電においても沿岸部より風が強く吹く沖合に設置することで効率よく発電することができるため、沿岸部より水深のある沖合でも設置可能な浮体式洋上風力発電設備の市場成長が国内外で見込まれています。海洋石油・ガス開発プロジェクトに用いられるFPSO(Floating Production, Storage & Offloading system:浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備)をはじめとした浮体式生産設備の建造・操業で、半世紀以上にわたる実績を誇る当社は、蓄積された浮体・係留技術を活かした浮体式洋上風力発電設備の開発により、世界的な脱炭素社会実現に向けた取り組みへの貢献を目指します。
TLP方式とセミサブマーシブル方式
当社が提案する浮体は、更なる大型化が予想される10MW以上の風車の搭載にも対応したTLP(Tension Leg Platform:緊張係留式プラットフォーム)型とセミサブマーシブル(Semi-submersible)型の2つです。
TLP型は、海底に打設した基礎杭と緊張係留により、浮体の優れた安定性と係留を設置する海底での占有面積を最小化できる特長があります。一方で、緩係留を採用するセミサブマーシブル型は、海底地質が基礎杭の打設に適さない設置海域で用います。
TLP型とセミサブマーシブル型の基本的な浮体構造は同じで、3本の円柱(column: カラム)の間を上下2本の箱桁で接続し、1つのカラムの直上に風車を搭載するシンプルな構造です。下部の箱桁は強度部材以外にポンツーン(pontoon)の役割も担っており、十分な浮力が確保できることで造船ドックでの風車搭載後の出渠、もしくは10m以下での浅い岸壁で風車搭載ができ、そのままの状態で設置海域への曳航を可能にします。これによって、使用できるドックや岸壁の制約が少なくなり、また、洋上で浮体に風車を搭載する方式に比べて現地設置工事費用の低減を図ることができます。さらに、メンテナンス費用の削減に向けて、万一、発電設備等で重故障が生じた場合に係留を切離し岸壁へ曳航できる機構を取り入れています。
TLP方式と占有面積
TLP方式の強みは、緊張係留により海底での占有面積を狭小化できることです。セミサブで採用している緩係留等の他の係留方式と比べて海面下での占有面積を1,000分の1程度に抑えられ、同じ広さの敷地内により多くの台数を設置することができます。
また、設置海域の確保においては、漁業や船舶運航への影響等に対する地域住民をはじめとする関係者の懸念を払拭することが大変重要になりますが、占有面積の小さいTLP型はこれらへの影響も最小限に抑えることができ、優れた社会親和性が期待されます。
緊張係留の高い安定性は、今後の主流となりうる15MWクラスの大型ウィンドタービンをコンパクトに搭載することも可能で、発電コストの低減が期待されます。
カラム(Column)
当社の開発するTLP型浮体式洋上風力発電設備の最新デザインは、TLPの3本の支柱部分(Column:カラム)の形状が、六角柱になっています。円柱の場合、鉄板を曲げる(丸める)工程が必要になるのに対し、六角柱は平板を使用できるので工数低減につながります。国内建造・量産化を視野に、製造コスト削減を追求したデザインです。