洋上船体補修
洋上船体補修法の開発への取り組み
20年以上にわたり洋上で石油・ガスの生産を継続するFPSOの 船体構造の保守には、洋上では十分な対応をとるのが難しいこともあります。腐食は、進展すれば強度要件を下回ってしまいますが、補修・補強に火気工事を実施することは生産継続の障害になるうえ、資機材搬入も容易ではありません。補修工事に携わる作業員を乗船させるにも乗員数の制約があり、居室の確保にも困難が生じます。
このような状況により、資機材の搬入が容易で、火気工事を伴わず、少人数・短期間で施工可能な新しい補修法の開発が求められる中、当社は、腐食の進展により強度的に劣化した船体部構造に対し、 VaRTM(Vacuum assisted Resin Transfer Molding:真空含浸工法)と呼ばれる工法を応用してCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic:炭素繊維強化プラスチック)を鋼材に貼付し、必要な強度にまで回復させる補修法の開発に着手しました。
この補修法の主たる目的は、補修工事が生産に与える影響を最小化することですが、工事場所の限定や、生産の中断によるペナルティを回避できるため、プロジェクト全体として大きなメリットが期待できます。
当社は、VaRTM工法を含む本補修法の研究開発を、東レ株式会社と共同で行っています。
VaRTM工法(Vacuum assisted Resin Transfer Molding)
VaRTM工法(Vacuum assisted Resin Transfer Molding)とは、大型FRP(fiber-reinforced plastic:繊維強化プラスチック)構造物の製造方法のひとつで、風車のブレードや航空機機体の製造で実用化されています。当社では、本工法を応用し、鋼板への炭素繊維シートの施工法の開発を行っています。
VaRTM工法を適用したFPSOの鋼板補修は、下図に示すように、
- 1鋼材に接合用強化材と炭素繊維シートを設置し、フィルムにて封入
- 2真空吸引により液状の樹脂を注入し、炭素繊維シートや接合用強化材に含浸
- 3樹脂が硬化(約一日)後、プラスティックフィルムを除去
本工法は、橋梁等の補修で一般に用いられているハンドレイアップ工法に比べ、CFRP単位厚み当たりの繊維含有率が高く、高品質の補修が可能となります。また、短期間での補修が可能なため、FPSO/FSOの船体部補修にマッチした工法と言えます。