カーボンキャプチャー(Carbon Capture)
FPSOからのGHG排出量削減
当社は、FPSOの脱炭素化やその他新規事業開発等の戦略を進めています。中でもFPSOからの温室効果ガス(GHG)排出量を削減するため、洋上で石油生産に伴う二酸化炭素(CO2)を大気中に放出する前に回収するカーボンキャプチャー(Carbon Capture)に関する技術開発を進めています。

CO2排出量を大幅に削減するためには、燃焼後の排出ガスの削減(Combustion Emissions Reduction)が必要となります。そのためには、ポストコンバッションカーボンキャプチャー※1(燃焼後排出ガスからの炭素回収:Post Combustion Carbon Capture)が重要であり、当社のこれまでのプレコンバッションカーボンキャプチャー※2(燃料ガスからの燃焼前の炭素回収: Pre-combustion Carbon Capture)、及び深海での地下貯留における知見と新規の技術開発を併せ実現していきたいと考えています。
- ※1ポストコンバッションキャプチャー(Post-Combustion Capture)- 燃焼後の炭素回収
燃焼プロセスが終了した後、排出ガスからCO2を分離する方法。一般的に、アミン溶液を用いた化学吸収法が使用され、排出ガスに含まれるCO2をアミン溶液に吸収させ、 その後CO2を分離します。 - ※2プレコンバッションキャプチャー(Pre-Combustion Capture)- 燃焼前の炭素回収
燃料ガスを燃焼する前に、化石燃料中のCO2を分離し、CO2を事前に除去する方法。アミン吸収法※3や膜分離法が使用されます。
CO2分離回収技術の取組み
当社は、FPSOからの温室効果ガス(GHG)排出量を削減するため、FPSO 脱炭素化に向けたロードマップに従い、PCCS (Post-Combustion Carbon Capture:焼後排出ガスからの炭素回収)技術開発においては「短期」、「中期」、「長期」の実用化ターゲットに基づき、それぞれの技術開発について並行して取り組んでいます。

短期:従来型プロセスの洋上での適用に向けた開発
既に脱硫や燃焼前CO2回収といった随伴ガス処理においてFPSOでの適用実績があり、さらに陸上においてはPCCSプラントの商業運転実績もある「アミン吸収法※3」を用いたCO2回収設備を近い将来のFPSO案件において搭載すべく、実際の案件に先行して基本設計・開発についてサプライヤーと共同で進めています。
- ※3アミン吸収法
排出ガスを冷却後、CO2と結合しやすいアミンを水に溶かしたアミン溶液と結合させCO2を回収する化学的回収法です。アミン溶液は効率よくCO2を回収できる一方で、洋上設備ではアミン溶液に排出ガス中のCO2を結合させる吸収塔のサイズが非常に大きくなってしまい、浮体設備上で大きな設置面積が必要になることが課題となっています。
中長期:FPSOに最適な技術開発
FPSO等の浮体式設備においてより適したPCCS技術の開発・実用化を目的とした研究開発に取り組んでいます。
具体的な取り組み
- 1搭載機器の省フットプリントの技術
陸上の発電所等と比べ機器設置面積が限られる浮体式設備において機器のサイズダウンを実現できる可能性のある技術です。 - 2CO2分離の省エネの技術
発電プラントと比べ原油分離のために熱が必要になるFPSOにおいて、CO2分離のための投入熱量低減を実現できる可能性のある技術です。 - 3CO2燃料電池(Fuel Cell)の技術
発電に利用するガスタービンからの排出ガスは燃焼過程で大気と燃料ガスを混入する都合上、排出ガス中のCO2濃度が低いことがカーボンキャプチャーにおける経済性の悪化の一因となっています。排気ガスに空気を含まずほぼ水と二酸化炭素で構成される燃料電池(Fuel Cell)を用いた発電法は排出ガス中のCO2回収において有利な技術だと考えています。