FPSOおよびFSO向け補修補強技術「CFRPパッチ工法」を共同開発 -腐食による局所損傷部への補修法として米国船級協会(ABS)の承認を取得-
2023年12月18日
三井海洋開発株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:金森 健、以下「三井海洋開発」)と東レ株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:大矢 光雄、以下「東レ」)は、このたび、三井海洋開発が設計・建造し、その後のオペレーション&メンテナンス(運転・保守点検)サービスを提供するFPSO(1)およびFSO(2)向けに、「CFRP(3)パッチ工法」を共同で開発しました。本工法は、最大径300㎜の局所腐食による損傷部への補修法として、米国船級協会(ABS:American Bureau of Shipping)の承認(4)を取得しています。
三井海洋開発と東レは、2024年から本工法によるFPSOおよびFSO向け補修補強の実適用を開始する予定です。
FPSOおよびFSOの保守は、洋上で石油やガスの生産を継続しながら行われるため、資材と機材搬入が容易で火気工事を伴わない工法の開発が強く求められています。三井海洋開発と東レは、2020年に「現場VaRTM(5)工法」を用いたCFRP補修技術を共同開発し、ABS承認を取得しました。この方法は広範囲の腐食補修に強みがある一方で、点在する局所的な腐食の補修が課題でした。
これに対し、「CFRPパッチ工法」は、あらかじめ製作したCFRPパッチ平板を局所腐食の上から接着させるのみの簡易な工法で、工事に関わる人数・時間を
約半分(6)にすることができます。また、真空ポンプ等の設備が一切不要で、補強材や施工道具の搬入も容易です。加えて、火気工事を伴わないため、補修工事が石油やガス生産に与える影響の最小化が期待できます。
広範囲の補修を強みとする「現場VaRTM工法」と、局所の補修を強みとする「CFRPパッチ工法」をFPSOおよびFSOの腐食状況によって使い分けることで、現場ニーズに広く対応していきます。
三井海洋開発と東レは、今後もFPSOとFSOの補修補強技術の開発を推進し、市場のニーズに迅速に対応するとともに、環境問題をはじめとする社会課題に向き合いながら、サステナブルな社会の実現へ貢献してまいります。
- <用語・説明>
- (1) FPSO :
Floating Production, Storage and Offloading systemの略で、浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備のこと。 - (2) FSO :
Floating Storage and Offloading systemの略で、浮体式海洋石油・ガス貯蔵積出設備のこと。 - (3) CFRP :
炭素繊維複合材料(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastic) - (4) ABS承認 :
国際的に航行する船舶に材料・製品・技術を適用する際に求められる船舶協会の審査・承認 - (5) VaRTM :
VaRTM(Vacuum assisted Resin Transfer Molding:真空含浸工法)と呼ばれる工法を応用してCFRPを鋼材に貼付し、必要な強度にまで回復する補修法。ABS承認に関する内容としては以下URLを参照。
「三井海洋開発社とのFPSO/FSO向け補修補強技術の共同開発について」
「浮体式海洋石油・ガス生産設備向け洋上船体補修法に対する承認をABSより取得」 - (6) VaRTM工法比の現場での施工時間であり、材料の調達期間などは含めない。