革新的な浮体式洋上風力発電システムに関するAiPをABSから取得
2025年07月31日
三井海洋開発株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:宮田 裕彦、以下、「当社」)は、革新的な浮体式洋上風力発電システム「iTLP2-FOWT」(以下 「i-TLP™2」)に関するAiP(Approval in Principle:基本設計承認)を米国船級協会(ABS)より取得しました。今回のAiP 対象範囲は風車本体を含まない支持構造物部です。
「i-TLP™2」は、優れた経済性の実現に加え、4 つの開発テーマに基づいて開発された安価でクリーンな電力の供給に貢献する風力発電システムです。トラス構造と円形のポンツーンを採用して作りやすい構成要素とし、接続部分の一部を可動式にすることで陸上での組み立てが容易になっています。固定式洋上風力発電設備が設置される海域よりも深い50m 以上の水深をターゲットとした、従来のセミサブ式などの浮体式洋上風力発電設備に代わる新たな風力発電の選択肢となりえます。
- 固定式洋上風力発電設備向けに設計・製作されたタービン・タワーを使用可能にする。
- サイト面積当たりの発電キャパシティを最大化する。
- 迅速な建造・据付を可能とし、早期のウインドファーム建設を実現する。
- どのような土質の海底に対しても設置可能にする。
セミサブ方式、スパー方式といった緩係留を用いた浮体式風力発電設備は、発電中に浮体の揺れが大きく、広い海底占有面積が必要で、風車の大型化に伴いより難しい対応が求められることとなります。そのため、当社はTLP (Tension Leg Platform:緊張係留)方式を用いた浮体式洋上風力発電設備の開発を進めてきました。
「i-TLP™2」の前世代コンセプトである「i-TLP™」は、ABS よりAiP を取得しましたが、開発テーマに対し、更なる改善の余地があり未発表といたしました。続く今回の「i-TLP™2」は、浮体の揺れや海底占有面積が小さいというTLP 方式の特徴に加え、ファーム規模での建造需要にも迅速に対応できるよう浮体設備の建造方法にも工夫を加えました。
また、多くの課題が残るものの「i-TLP™2」の開発からヒントを得て、従来の着床式の限界水深を超えた最大100m 程度の水深にも設置可能となる新たな着床式の洋上風力発電システムも並行して開発中です。

右: ABS Vice President, Global Offshore Renewables Rob Langford 氏
左: 三井海洋開発CTO(Chief Technical Officer) 松宮 晃一
当社は、FPSO (Floating Production, Storage & Offloading system:浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備) をはじめとする浮体式設備にかかわるトータルソリューションを提供するリーディングカンパニーとして、その経験と技術により大容量風車搭載を可能にするとともに高い社会受容性と優れた経済性をもつ洋上風力発電設備の早期実現に向けて、取り組んでまいりました。
今回の「i-TLP™2」は、安価でクリーンな電力を供給による、エネルギー・トランジションに貢献する革新的なソリューションであり、「ビジョン2034」で掲げる、「洋上風力発電のエッセンシャル・プレイヤー」を目指す当社にとっての大きなマイルストーンと位置づけています。今後も、要素技術の成熟度の向上に努め、引き続き真摯な姿勢で技術開発や実証機会を探求し、より経済性が高く環境負荷の小さい革新的な洋上風力発電ソリューションの実現に向けて邁進していきます。
※ i-TLP™2 動画 (フルバージョン 7 分28 秒) https://youtu.be/8w8k35VZIkw