現在、私はMINCの技術部 構造Gr.に所属しています。主な担当業務は２つあり、１つは、FPSO new built projectの、FPSO特有のOffshore構造物の設計・解析業務です。

もう１つは、R&D業務で、CFRPを用いたFPSO船体部補修の開発と実用化を主担当者として進めています。

どの仕事にも共通して面白いと思う点は、自分の持つビジョンをステークホルダーに伝え、様々なコミュニケーションを経ながらそれを達成することです。理解の齟齬や予期せぬ事象は頻繁に起こりますし、その理由も様々ですが、それをうまく回避したり収めたりすることに面白さを感じます。その経験を基に次の機会でうまく立ち回れたときには、ちょっとした満足感もあります。

また、大なり小なり、自分が定めた、或いは信じた方針で業務を遂行し、期待していた結果を得られた時には達成感が得られます。しかしながら、何事も自分の責任で決断を下すことは非常に精神力が求められます。他人の決定事項や成果物にはいくらでも文句を付けられますが、いざ当事者となるとそうはいきません。図面で言うと、自分が決めた線1本が原因で工期やコストに悪影響を及ぼすこともありますし、構造が崩壊することもあり得ます。プロジェクトの遂行で言えば、自分の指示が後々、期待しているものと全く異なる未来に繋がることもあり得ます。脳に汗かきながらタイムリーに決めること、決めたことが成功することほど気持ちいいことはありません。反対に上手くいかなかったときに一生懸命リカバーすることも醍醐味のひとつですね。自分で決めたことであるからこそ、どこからでも力が湧いてくるものです。

本当に面白いもので、今まで似たような図面を見てきたはずなのに、いざ自分が線を決めるとなると、一度手が止まります。本当にこれで良いのか考え込んでしまいます。過去の実績をもう一度調べたり、設計条件を整理してみたり、ちょっとした計算をやってみたり・・・。どんなに小さい構造のほんの一部でもこういうことが起きます。他に、実績の無い状態で、かつ責任者の立場で方針を定める場合には、胃が痛くなるほど悩みます。こういう未来になってしまったらどうしよう、どうリカバーしよう、出来なかったらどうしよう等々、不安がよぎり、その不安を打ち消すためによくよく計画を練り、思案に暮れることになります。

今まで携わってきた仕事やプロジェクトにおいて、最初に踏み出した一歩が、本当に求めているゴールへの方角に向かっていなかったことを、大なり小なり、少なからず経験してきました。時間が経つほど、プロジェクトが進むほど、方角を修正することは非常に困難になっていきます。最初の一歩を正しい角度で踏み出すためには、知識の量や深さは勿論のこと、全体を見通す力や、未来を予想する力が必要だと思っています。この精度を高めていくことが、今後の目標です。